2016 年 73 巻 6 号 p. 505-513
アミロースカルバメート誘導体は,隣接した繰返し単位の置換基間の分子内水素結合,そして置換基のかさ高さ,さらには水素結合した溶媒分子によって,さまざまならせん構造や剛直性を発現する.これらのうち,とくに後者の剛直性は,ジメチルスルホキシド中のアミロースの2倍から20倍の範囲にわたる.われわれは最近,溶液中で比較的屈曲性の高い鎖として振舞う環状アミロースを原料としてさまざまな剛直性をもつ環状鎖が合成可能であることを提案した.本報では,アミロースカルバメート誘導体の剛直性の起源,そして剛直な環状アミロースカルバメート誘導体の溶液中での分子形態や分子間相互作用について報告する.剛直環状鎖の分子形態や分子間相互作用には線状鎖のみからは予想できない特徴がみられた.