2018 年 75 巻 1 号 p. 1-8
多糖はドラッグデリバリーシステムや細胞足場材料など医用材料として有望視されている高分子の一つである.とくに生体適合性に優れた多糖は,コロイド分散系からヒドロゲルに至るまで多様なアプローチが期待されている.本報では,ラン藻Aphanothece sacrumから抽出される2×107 g/molを超える高分子量をもつ多糖サクランを題材として,センチメートルスケールに至る自己組織化について紹介する.この多糖は自己集合体として外径約1 µm,長さ20 µm以上マイクロロッド・マイクロファイバーを形成し,乾燥環境下で極めて特異な散逸構造をみせる.新たな材料設計技術の開拓を念頭に,1)固気液界面における自己集積,2)マクロ空間の分割現象,3)一軸配向膜の形成について紹介する.得られた配向膜は,異方性半透膜や異方性細胞足場材料など新規医用材料への展開が期待される.