2018 年 75 巻 1 号 p. 42-47
生体深達度の高い超音波照射によって活性酸素種を生成する超音波増感剤を利用した超音波力学療法(SDT)が,生体深部の疾患治療に有効な低侵襲治療として期待されている.筆者らは,超音波増感剤である二酸化チタン(TiO2)ナノ粒子に着目し,ポリイオンコンプレックスミセルに内包して細胞内へデリバリーした後,超音波照射を行うことで一重項酸素生成を通した殺細胞効果を示すことを明らかとしてきた.本研究では,TiO2ナノ粒子を内包したミセル内部の疎水場へ疎水性プロドラッグであるカルモフールを分配させることによって可溶化した.可溶化されたカルモフールの抗がん活性およびミセルに内包されたTiO2ナノ粒子への超音波照射によるSDT効果をin vitro細胞生存率評価により,カルモフールの加水分解による5-フルオロウラシル生成を逆相クロマトグラフィ測定により検討した.これらの評価により抗がん活性とSDT効果の相加効果によって細胞死が誘導されることを確認した.