2018 年 75 巻 1 号 p. 23-31
再生医療には,幹細胞の増殖分化を制御する細胞培養技術の開発が必要不可欠である.しかし,体内から幹細胞を単離して培養した場合,必要とする機能が失われることが少なくない.この原因として,体内で幹細胞が維持されている細胞微小環境,すなわち,幹細胞nicheが失われ,従来の細胞培養環境では不十分であることが考えられる.このため,細胞に対して最適な細胞培養環境を整える技術が必要となる.近年,マトリゲルやコラーゲンなどの細胞外マトリックスを用いた細胞培養技術に加えて,幹細胞の増殖分化を工学的に制御する技術が研究されている.すなわち,①細胞シグナルタンパク質を固定化した細胞培養基材,②異なる力学的性質をもつ細胞培養基材,③三次元細胞培養環境などである.本研究では,異なる力学的性質をもつ三次元細胞培養環境として,生体機能性ヒドロゲルによりMSCをサンドイッチするサンドイッチ培養について紹介する.