2018 年 75 巻 2 号 p. 128-136
生体組織から細胞成分を除去した細胞外マトリックスである脱細胞化組織は,組織再生のための移植材料として広く利用されている.筆者らは高分子材料複合化による脱細胞化組織の新規応用を目指している.本報では,まず脱細胞化組織の応用の基礎事項である調製法,構造や力学特性についてまとめた.次に,脱細胞組織の組織再生に関して,移植部位に適した組織が再生される場合が多いが,一方で異所性移植では脱細胞化組織の由来となった組織が再構築される場合もある.それぞれの報告を紹介し,組織再生の終着点の違いについて考察した.次に,脱細胞化組織の異所性における移植材料としての応用のため,コンプライアンスに注目し,脱細胞化組織への高分子材料複合化によりコンプライアンスを移植部位に適合させた検討について報告する.さらに,脱細胞化組織の新規の医用応用を目指し,高分子材料複合化による機能性付与について検討した結果を紹介する.