2018 年 75 巻 2 号 p. 137-142
多数のアミノ基をもつポリリシンには,直鎖状ポリリシンと樹木状ポリリシンがあり,これらはバイオ材料として利用されている.本報では,直鎖状ポリリシンと樹木状ポリリシンについて,細胞足場材料および機能性材料としての性能を比較した.まず,神経細胞の足場材料として,ポリグリコール酸繊維の表面をそれぞれのポリリシンで被覆した.直鎖状ポリリシンと比べて,樹木状ポリリシンでは被覆効率は低いものの,多くの神経細胞が接着することがわかった.また,ポリリシンのアミノ基に温度応答性を示すエラスチン様ペプチドを結合したところ,化学組成が同じであるにもかかわらず,形状によって温度応答性が異なった.分子鎖が柔軟な直鎖状ポリリシンは,さまざまな高次構造をとるのに対して,樹木状ポリリシンは剛直な球状構造をとる.このような分子の屈曲性の違いが,材料としての性能に影響を及ぼすことが明らかとなった.