抄録
建築材料用ウレタン塗膜を低湿度環境で試料表面温度を変化させた環境で紫外線照射試験を行い,暴露による化学結合変化をFT-IR,ラマン分光で,弾性係数変化を超音波パルス法で測定し,それらの光劣化メカニズムについて議論した.この系では共役二重結合連鎖が有効に形成されず,黄変は目視で確認できなかったが,黄変につながる物質の変性が生じていることがラマン分光法の結果から示唆された.また,著名な劣化反応のNorrish反応は温度依存,光-Fries反応は温度非依存の傾向を示した.さらに,暴露による凝集状態変化に関与する指標(メチレン基とメチル基の吸光度比)を抽出し,弾性係数変化との関連を議論した結果,暴露初期においてはその指標である程度弾性係数の変化を説明できるが,暴露が十分進んだ系においては指標のみで弾性係数変化を議論することは困難であった.