2018 年 75 巻 5 号 p. 406-420
悠久の時を経て自然界に誕生した天然(高)分子の中には,立体化学的に興味深い構造を有する化合物が数知れず存在する.分子の構造は,それ自身が発現する機能と密接な相関関係があることを考えると,“天然資源のユニークな構造を戦略的に分子設計に組み入れることで,石油化学製品では成し得ない面白い機能を備えた新材料を開発できうる”ことは,想像に難くない.さらに,天然(高)分子の多くは,化学的に修飾可能な官能基を有しているため,有機合成化学的手法を用いて適切に構造変換することで,材料としての付加価値を一層高めることも可能となる.本報では,天然資源の中でもとくに,安価で入手の容易な糖質化合物に着目し,それらの構造的特徴を勘考して設計した新規の光学活性ポリマーの合成,高次構造制御,およびキラリティーに基づく機能発現に焦点を絞り,筆者らの最近の研究を紹介する.