2018 年 75 巻 5 号 p. 433-443
がん免疫療法の実現のために重要な細胞性免疫の誘導には,樹状細胞などの免疫担当細胞に抗原を運搬すると同時に,免疫誘導に適した状態に活性化する必要がある.筆者らは,酸性pHに応答して膜融合性となる高分子を抗原封入リポソームに修飾することで,細胞内への抗原運搬システムを開発した.さらに,主鎖として生理活性多糖を用い,そのヒドロキシ基にカルボン酸ユニットを導入することで,細胞内デリバリー機能と免疫細胞活性化機能を併せもつ多機能性多糖を合成した.多糖誘導体を修飾したリポソームは,樹状細胞に効果的に取り込まれ,エンドソームの弱酸性pHに応答して膜融合性となりサイトゾルに抗原を運搬することで,抗原特異的な細胞性免疫を誘導した.さらに,多糖誘導体修飾リポソームとTGF-βシグナル阻害剤を包埋したPEG修飾リポソームを担がんマウスに投与すると,細胞性免疫誘導と免疫抑制解除の相乗効果で強力な抗腫瘍効果が誘導された.