2018 年 75 巻 6 号 p. 507-514
オレフィン重合反応において,二核金属錯体触媒は,しばしば単核金属錯体触媒とは異なる触媒特性を示すことが知られている.従来報告されている二核金属錯体触媒の多くは,単核錯体の配位子を柔軟なスペーサーで連結した構造を有していた.本研究では,金属間における共同効果の効率よい発現を期待し,二つの金属中心が近接した位置に固定された二層型環状二核錯体の設計を行った.それらがエチレンやα-オレフィンの重合において,単核錯体に比べて高い活性を示すことや,より高分子量のポリマーを与えること,高温においても触媒としての安定性が高いことを見いだした.さらに,種々のコモノマーとの共重合における,コモノマーの導入量や導入される位置,構造が大きく変化するなど,二層型環状二核錯体が単核錯体とは異なるユニークな重合触媒能を示すことを明らかにした.