2019 年 76 巻 1 号 p. 83-89
クエン酸三ナトリウム(CIT),トリポリリン酸ナトリウム(TPP),またはアルギン酸ナトリウム(Alg)で架橋したキトサン(CS)ゲルとポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) (PNIPA)を組合せることで,温度応答性CIT@CS-PNIPA,TPP@CS-PNIPAおよびAlg@CS-PNIPAをそれぞれ合成した.調製したゲルの圧縮試験により測定した弾性率は,CIT@CS-PNIPAが18.9 N/mm2,TPP@CS-PNIPAが86.6 N/mm2,Alg@CS-PNIPAが<0.01 N/mm2であった.CIT@CS-PNIPAおよびTPP@CS-PNIPAについて,シアノコバラミン(VB12)をモデル薬物として内包し,それぞれ薬物放出挙動を確認した.LCSTより高温の40°C,30分でのVB12放出率は,CIT@CS-PNIPA,TPP@CS-PNIPAともにほぼ100%に達し,PNIPAの熱応答による効果を確認するとともに放出には架橋剤による差を認めることができなかった.一方,LCST以下の25°C,30分では,VB12放出率がCIT@CS-PNIPAで70%,TPP@CS-PNIPAは10%であり,架橋剤による薬物保持性能に大きな違いが生じた.