高分子論文集
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原著論文
UV硬化型樹脂液の組成が及ぼす各種基材への接着特性─単官能モノマーの影響─
鄭 京模金 善求柳 政庸李 鎔奎小関 健一
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2019 年 76 巻 4 号 p. 341-348

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抄録

オリゴマー,多官能モノマー,単官能モノマーを使用する多少複雑なUV硬化型インキの系を設計し,それらの化学的・物理的な諸性質の違いがインキの接着特性にどのような影響を及ぼすかについて評価などを行っている.先行研究においては三官能モノマーと二官能モノマーとの影響を中心に報告したことであり,本研究ではインキの接着性に対する単官能モノマーの影響について検討した.その結果,メタクリレート系モノマー(CHMA,HEMA)を用いて作製したインキは,アクリレート系モノマーを用いて作製したインキに比べて硬化膜の架橋密度が低くて,収縮によって発生した内部ひずみを十分に緩和させることが可能な皮膜構造を形成した.とくに,このような皮膜構造は接着性の改善に効果的であることがわかった.モノマーの構造にも依存するが,単官能モノマーは重合してリニヤーなポリマーを形成するので,架橋密度への効果は低く,柔軟な構造体を形成するといわれている.ただし,オリゴマー,多官能モノマー,単官能モノマーを使用する多少複雑なUV硬化型インキ系の場合,反応性が早い単官能モノマー系の添加量が多くなると架橋点間距離が短く柔軟性が十分ではない硬化膜を形成する可能性が高くなる.そして,収縮によって発生した内部ひずみを十分に緩和することができないので,接着性を低下させる可能性が高いと考えられるが,表面張力や収縮率が低い単官能モノマー(CHA,HBA)を使用することは,内部ひずみの発生を抑える効果があり,接着性の改善に寄与することがわかった.

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© 2019 公益社団法人 高分子学会
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