論文ID: 2015-0059
グリシン,ジグリシン,トリグリシンを部分構造とする脂肪酸型両親媒性分子を合成し,固体試料のFT-IRスペクトルを測定した.これらの化合物は,いずれもアミドI吸収帯が1650 cm-1と1640 cm-1に分裂する典型的なポリグリシンII構造(31-ヘリックスの一種)を形成していることがわかった.一方,トリアラニンやトリバリンを含む両親媒性分子を同じ固体試料で測定したところ,1630 cm-1付近の強い吸収から平行β-シートの形成が認められた.以前報告した逆平行β-シートの赤外スペクトル(1690 cm-1付近の弱い吸収と1630 cm-1の強い吸収)をあわせると,トリペプチドが形成できる三つの二次構造(平行β-シート,逆平行β-シート,31-ヘリックス)すべての赤外スペクトルを得ることができ,小さなペプチド断片が作る二次構造を診断するための指標を作ることができた.