論文ID: 2016-0023
高分子ゲルは最近数十年で急激に進化してきたソフトマテリアルであり,基礎科学的な研究から応用研究まで盛んに行われている.高分子ゲルは高分子が形成する網目構造によって溶媒の流動を妨げているが,網目構造の維持にかかわる物理的,化学的な相互作用は多種多様である.本報では筆者が最近報告した3種類のゲルに関してまとめる.ポリ(L-乳酸)は特定の溶媒と複合体結晶によって繊維状の構造を形成し,溶媒の流動を阻害する.スチレン–ブタジエン–スチレンのトリブロック共重合体は鉱油中でスチレンブロックが凝集することで高分子網目を形成してゲル化する.無水マレイン酸変性ポリプロピレンとセラミックス繊維のコンポジットはセラミックス繊維をポリプロピレンの球晶が架橋することでより少ないとセラミックス繊維でゲル化が可能である.これらの架橋構造を制御することによってゲルの耐熱性などの物性を変えることができる.