論文ID: 2017-0087
溶液中を分散する鎖状高分子やナノ粒子のラマン分光情報を選択的に取得できれば,高分子の構造や物性をより精密に評価できるであろう.これに対し,光の電磁気学的作用である光圧を利用すると高分子を捕まえ,顕微分光学的手法により高分子構造を分析できる.筆者らは,この光ピンセット・顕微ラマン分光法を用いて,相分離により形成された温度応答性高分子リッチドメイン中の高分子濃度を見積ることに成功した.さらに,光圧により形成した高分子リッチドメイン中に,溶液中に微量に溶解する有機分子を抽出・検出する分析手法を開発した.本報では,代表的な温度応答性高分子であるpoly(N-isopropylacrylamide) (PNIPAM)の光捕捉挙動とそのメカニズム,および高分子リッチドメインの高分子濃度決定手法を中心に述べるとともに,光捕捉したPNIPAM分子集合体への蛍光色素分子の抽出・検出法についても述べる.