論文ID: 2017-0088
近年の放射光技術の進展に伴い,従来の光散乱法では測定が困難であった低温・高粘性率溶媒などの条件でも,小角X線散乱法により高分子希薄溶液物性を高精度に決定できるようになってきた.この手法は,高分子の剛直性がとくに重要になる比較的分子量が低い領域における環状・分岐高分子の分子形態決定にも重要な役割を果たす.本報では前者の特殊条件下での線状高分子の測定例として,広い温度範囲にわたるポリスチレンの特性比,低温でサーモクロミズム現象を示すポリシランの分子形態と分子間相互作用の温度変化,そしてレオロジー測定に適したイオン液体などの高粘性液体中における多糖類の分子形態の決定について,その手法とともに紹介する.さらに,後者の非線状鎖の例として剛直な環状多糖誘導体,星形鎖,そして櫛形構造をもつ高分子電解質–棒状ペプチド複合体の分子形態の決定についてまとめる.