15 巻 (1958) 162 号 p. 610-618
トリアセチルセルロース (TAC) 製造に関する基礎的研究の1つとして, TACおよび第2次アセチルセルロース (SAC) のメチレンクロライド (MC)-メタノールおよびMC-アセトン混合溶媒に対する溶解性および溶液中での溶解状態を比較検討した。実験方法としては, 各混合組成について粘度, ヘキサンによるdilution ratio (DR), 混溶媒溶液の沈殿点組成などの測定を行った。SACについてはとくに極限粘度回の温度依存性などの実験を加え, 溶液中における分子の広がりについて, TACの場合と比較検討した。その結果を以下に要約する。1) MC-メタノール混溶媒ではTACではMC85 (容量)%, SACではMC65%付近に溶媒力が最大となる点が存在する。2)[η] が最大を示す組成および沈殿点組成からTAC-MC系についての浸透圧測定結果と合せ, これら3成分系の各成分対に対する熱力学的相互作用係数が計算でき, 妥当な値を得た。かくして各系の溶解性と組成の関係が一応定量的に与えられる。3) TAC-MC-アセトン系では溶解方法により異なった溶解状態をとる。4) TACの [η] の溶媒組成による変化はSACのそれよりも大きく, 普通の可撓性高分子鎖の場合の溶媒和効果 (long range interference) もTACの場合には [η] にかなりの寄与をもつと考えられる。しかしその温度依存性がかなり大きく, 溶媒 (組成) によりそれほど変らないことは分子鎖の可撓性に直接関係するshort range interferenceの効果がより大きいことを示している。5) SACの場合にはshort range interferenceの効果が支配的となるようであり, ピリジンなどのようにその分子内水素結合を切断するような溶媒を用いないかぎり [η] は溶媒によって大して変化しないが, 温度上昇に伴いかなり低下する。