19 巻 (1962) 204 号 p. 261-266
ミネラルオイル中におけるdicumyl Peroxide (以下DCPと略記) の分解反応を, 赤外線吸収法によりイオウを共存させたときとさせないときとの二つの場合について比較検討した。DCPの分解機構としてはラジカル分解, イオン分解の2機構が考えられ, ラジカル分解生成物としてはα-メチルスチレン, キュミルアルコール, アセトフエノンがあげられ, イオン分解生成物としてはα-メチルスチレン, フェノール, アセトンが考えられる。したがって上記DCP分解生成物を赤外線吸収法により定量することによりDCPの分解機構を知ることが可能である。この結果イオウを加えない場合のDCPの分解は130℃ から160℃ までの反応温度においてラジカル分解が起こっていることが確かめられたが, 一方イオウを加えた場合には130℃ では主としてイオンへの分解が, 160℃ ではラジカルへの分解が起こっていることが認められた。またイオウを共存させた場合の反応液を水で抽出しその抽出水のpHを測定することにより, 反応液中のH+濃度を推定した。以上の結果からDCPイオウ併用により, 反応液中のH+濃度は増加し, そのために反応温度が低い (130℃) ときにはDCPは主としてイオンへの分解を起こすものと考えられ, 反応温度が高くなるに従ってしだいにラジカルへの分解速度のほうがより増加し, 160℃ ではラジカル分解が優先することになるのであろう。この結果は第1報に報告したとおり, ポリヱチレンにイオウ, DCPを混合した場合, 処理温度が160℃ 以上の時にはDCPは主としてラジカル分解を起こし, このためポリエチレンからの水素引き抜き, イオウの活性化を促し, ポリエチレン中に炭素一イオウー炭素橋かけ結合を生成するという推論に対する裏付けとなると考えられる。