19 巻 (1962) 208 号 p. 475-482
リグニンSBR共沈体中に, 多少とも水分が残留すると, その加硫体の応力-ひずみ曲線は, 最初伸度が約20%程度で異常な高モジュラスを示し, その後, ほとんど一定の張力を保持したまま, 平たんなplateauを描く。この場合, 伸長部にくびれ (neck) やこぶ (knot) を生成するが, 伸長が進んでplateauが消失すると同時になくなってしまう。この異常現象の機構を解明するために, 加硫剤を配合しないで素練り-熱プレスー素練り-加硫の連続処理を施し, この処理によって起こるリグニンーSBRコンパウンドの粘度ならびに応力-ひずみ曲線などの変化を追究するとともに, 電子顕微鏡写真を参照して検討した結果, 熱プレス時にリグニン粒子が集合して硬相を形成することがわかった、この場合リグニン粒子-SBR接触界面に介在する微量の水分がリグニン粒子の集合を助長して, 硬相の形成を容易にする。一方plateauの発達した加硫体では, 引張速度の大きいほど切断強度や伸度は低下する。また強度測定に先立って予備伸縮や, ベンゼン膨潤処理などを施すと, plateauは消失して強度は上昇する。以上の諸実験からplateauの形成は水の媒介によって熱プレス加硫するときに生成したリグニン硬質組織による応力伝播に対する妨害, ゴム鎖の運動に対する束縛に基くものであることを結論した。