48 巻 (1991) 9 号 p. 555-562
高線量率 (25Mrad/s) 下において, 可塑化ポリ塩化ビニル (PVC) フィルムの表面に同時照射法により, 溶解度パラメーターδの異なるモノマーを電子線グラフト重合し, 見掛けのグラフト量, グラフト層の厚さからグラフト重合機構について, またグラフトフィルムの染色度, 帯電圧からグラフトフィルムの構造について考察した. モノマーのδが増大するほど見掛けのグラフト量は減少し, グラフト層も薄くなった. これは, 可塑化PVCとモノマーとの相溶性が, 可塑剤とモノマーとの相溶性に依存し, モノマーのδが増大するほど, 可塑剤とモノマーとの相溶性が低下して, 可塑化PVCフィルム中へのモノマー含浸量, モノマー含浸厚さが減少したためと考えられる. またモノマーのδが増大するほどグラフトフィルムの染色度は低下し, δの大きいモノマーをグラフト重合した可塑化PVCフィルムではcontrolフィルムよりも高い帯電圧を示した. このことから, δの大きいモノマーから成るグラフト鎖は可塑剤との相溶性が低いため, グラフト鎖が可塑剤の運動を束縛して, 可塑剤の移行性を低減させたことが推察される.