55 巻 (1998) 4 号 p. 225-229
ポリ (N, N-ジメチルアクリルアミド) (PDMAAm) とポリアクリル酸 (PAAc) の混合緩衝水溶液の透過率の温度依存性を, 種々のpH条件下で測定した. pH 3.2では温度変化に依存せず沈殿を生成し, 安定なコンプレックスが形成された. pH 3.75では約60℃に相転移温度 (LCST) を示しコンプレックス形成が観察され. pH 3.8以上ではコンプレックス形成は認められなかった. これらの結果から, 次のようなことが考察された. 低いpH条件下では, PDMAAmとPAAcは水素結合性高分子間コンプレックスを形成する能力を有した. pH 3.75では, PDMAAm/PAAc間で水素結合能を失い高分子がそれぞれに溶解したが, 60℃になると, PDMAAmの脱水和挙動がPAAcが形成している分子内会合の疎水性環境場と協同的に働いて疎水性凝集を生起し, 温度変化に対し相転移現象をひき起こした. pH 3.8以上になると, PAAcのプロトン解離がさらに進み分子内会合も消失し, PDMAAmとの疎水性相互作用もできなくなった. PDMAAmとPAAcは, 共に水素結合サイトをもつばかりでなく疎水性環境場をも発現し, pHならびに温度によって応答する新しい高分子間コンプレックスであると考えられる.