2024 年 45 巻 p. 75-92
本研究は日本語学の分野で非分析的否定疑問文と呼ばれる「(ノ)デハナイ↓カ」の1つの機能について、会話分析の中心的考え方である行為連鎖の視点を導入し、自然会話のデータを用いて分析・考察するものである。話し手の「(ノ)デハナイ↓カ」(文末が下降音調)を含む発話とその応答による連鎖が、①本活動の前提となる事柄を確認する、②確認のやりとりをもって、準備または予備の働きをするという2点の機能をもっていることを実証する。そこで、本研究では、この確認の連鎖を「予備的装置」と命名する。さらに、「予備的装置」について、①確認のターゲットは参与者らが極めてアクセスしやすい事柄である、②聞き手は確認を与えて参加する、③重要なのは本活動である、④この連鎖は本活動に取り込まれる、⑤副次連鎖を構成することがある、といった5つの特徴を持ちながら、後続する活動を聞き手と共同的に産出することを実証する。