口腔病学会雑誌
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アルジネート印象材の膨縮曲線と模型の寸法変化との相関関係
佐藤 剛太郎
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1971 年 38 巻 4 号 p. 467-482

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抄録

アルジネート印象材自体の膨縮変化が, それの印象によって得られた模型の膨縮変化にどのような影響を及ぼすかを知り, 印象材改良の目標を明らかにするとともに, 現存の印象材によって最良の臨床成果を得るための条件・方法をみいだすことを目的とした。
そのために, まずアルジネート印象材の自由線膨縮量を膠化直後から正確に測定しうる装置および方法を考案した。
これによって種々な条件下にアルジネート印象材の自由線膨縮曲線を正確に測定記録するとともに, 相似の条件で作られた模型の膨縮変化をも測定して, 対比検討した結果次のような知見ならびに結論をえた。
1.水銀槽を用いる方法によって, アルジネート印象材の自由線膨縮変化を膠化直後から諸条件下で測定しうる装置および方法を考案した。
2.臨床的に望ましい印象材としては, 膠化の初期に強く収縮し, 石膏泥等による影響が少なく, 注入石膏凝結時に印象がやや収縮しているようなものが良いことが判明した。
3.印象材の自由線膨縮変化が収縮 (膨張) に傾けば傾くほど, それに対応して模型の外側値が大きく (小さく) , 内側値が小さく (大きく) なるという相関関係は, 諸材料や諸条件の比較成績の上に一貫して認められ, 特に模型の内側値については量的にもかなりの規則性がみられた。
4.温度, 乾燥 (湿度) , 水, 固定液, 石膏泥, 印象材の種類等の諸因子が印象材の膨縮に与える影響がしらべられた。
5.現存するアルジネート印象材によって精度のよい間接法模型を得るには, 印象材としてパルジネックスを用い, 漬水はもちろん水洗も必要なときのみ最小限にとどめ, 印象材を収縮させる目的で2%ZnSO4溶液を用い, 印象撤去後できるだけ早く, なるべく凝結時間の短い石膏を注入することがすすめられる。

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