口腔病学会雑誌
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歯槽骨吸収とホスファターゼに関する研究
平井 敏博
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1972 年 39 巻 4 号 p. 692-703

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抄録

歯を失った後の歯槽骨の吸収機構の解明は義歯の維持, 安定の点から補綴学的にも重要な命題である。硬組織とアルカリ性ホスファターゼ (ALP) の関係は今目まで主に硬組織, 特に骨形成における役割りを中心に報告され, 骨吸収との関連性を検討した報告はほとんどみられない。本研究はALPによりウシから得た歯槽骨粉末をはじめとする硬組織が溶解されるかどうか, そしてそれは確かに酵素作用であるか否かを確かめる目的で実験, 検討を行なった。
歯槽骨粉末はALP添加により特異的なCa, Pの溶出増加が認められた。また温度の影響, 阻害, 賦活剤の影響, Lineweaver-Burkの解析などによりこの溶出反応が酵素反応の特性を良く示した。
ALPのPhosphoprotein phosphatase作用は認められたが, 微弱であった。
硬組織の無機質は溶け易い分画と溶け難い分画とがあるように思われ, ALP活性が充分であっても溶け難い分画が比較的多量に存在することがみとめられた。
酸性ホスファターゼによる歯槽骨粉末よりのCa, P溶出に及ぼす影響はみられなかった。

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