口腔病学会雑誌
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デキストラナーゼの歯垢沈着に及ぼす影響について
―アカゲザルにおける観察―
野口 俊英
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1972 年 39 巻 4 号 p. 787-799

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抄録

歯垢中にみられる細菌性菌体外多糖類は歯垢形成に関してきわめて重要な役割を果たしている。そしてこれらの細胞外多糖類の大部分 (95%) がデキストランであると認められて以来, デキストラナーゼによる歯垢沈着の抑制が種々なされてきた。その結果In vitroにおいては, その抑制効果が明らかにされたが, In vivoにおいては抑制がおきたとするものと, おきないとするものとに分れている。そこで本実験ではアカゲザルの柔かい食飼中にデキストラナーゼを混ぜ, それが歯垢形成におよぼす効果, ならびに機構について臨床的および生化学的に追求した。まず臨床的には新たに考案した口腔内規格写真撮影装置を用い, 61|16/61|16の唇面および頬側面に付着した歯垢を0.1%塩基性フクシンで染色し, カラー顎撮影した。そしてそれを一定の倍率でスライド上に投影し, 歯の表面に沈着した歯垢の拡がりを固有の面積法で評価した。その結果, 実験開始2, 4, 7, 14, 21日後のどの時点においでもデキストラナーゼを与えた実験群と与えない対照群において歯垢沈着に有意な差が観察された (P<0.01) 。また実験群および対照群のサルの全歯から可能なかぎり, スケーラーで日齢7日目の歯垢を集め, 乾燥重量を測定した。その際, 実験群と対照群のサルを7日毎に交互に入れかえてくり返し9週行ったところ, 両者に有意な差 (P<0.01) が観察された。そこで同様に, 実験群および対照群のサルから日齢7日目の歯垢を採取してきて可溶性および不溶性の多糖画分を抽出し, その中に含まれる全糖量を測定した。その結果, デキストラナーゼを与えた実験群において, 前者は対照群の約1/100, 後者は1/2に減少した。なお抽出してきた多糖画分について水解, 酵素分解および赤外線吸収スペクトルによる分析を行ったところ, 可溶性の多糖画分は可溶性デキストランが大部分を占めており, 不溶性多糖画分は不溶性デキストランが主であることが明らかになった。

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