口腔病学会雑誌
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歯周疾患に罹患したヒト歯肉のコラゲナーゼ活性について
小鷲 悠典
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1973 年 40 巻 4 号 p. 344-355

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抄録

コラーゲンは歯周組織を構成する主要な化学成分であり, コラーゲン線維の破壊は歯周疾患の進行に深い関係があると考えられる。コラーゲンの分解にはコラゲナーゼが特異的に関与すると思われるので, ヒト歯肉のコラゲナーゼ活性を定量し, 歯周疾患の病態との比較検討を試みた。
歯周疾患患者16名の18部位に対し歯肉切除手術を行な。て得た歯肉を実験材料にした。術前に手術部位のX線写真撮影, 口腔内写真撮影および臨床所見の診査を行なった。切除した歯肉はすぐに抗生物質を加えたEagle MEM中で, 約1mm3の大きさに切り, 回転培養を行なった。3日後に培養液から酵素を抽出し, 3Hを標識したラット皮膚コラーゲンの0.2%ゲルを基質とし, 37℃で1時間保温した。3H-標識コラーゲンゲルが溶解して遊離した放射能を測定することによりコラゲナーゼ活性を定量した。歯肉の一部は10%中性ホルマリン固走, パラフィン包埋後, 6μに薄切し, 旺E染色およびギムザ染色を施こし, 組織中に浸潤している炎症細胞やマスト細胞の数を計測した。
この結果, 歯周ポケットの深さの平均値, PMA指数の平均値および歯槽骨吸収度の平均値とコラゲナーゼ活性との間に危険率5%で有意な相関がみられた。RussellのPIを適用して歯周疾患の程度の指標としたものとコラゲナーゼ活性との間には比較的高い相関がみられた (r=0.72, P<0.01) 。PIが4点未満の疾患の軽度の群 (G群) と4点以上の進行した群 (P群) との間でコラゲナーゼ活性の平均値の差を検定したところ危険率5%で有意差はなかったが, P群の活性が大きな傾向がみられた。
一方組織像においては, 白血球はあまりみられず, 形質細胞やリンパ球が大部分を占める炎症細胞の数とコラゲナーゼ活性との間には相関はなく, マスト細胞数とコラゲナーゼ活性との間に弱い相関がみられた (P<0.05) 。これらの結果ふら歯肉コラゲナーゼの起源となる細胞についての考察を加えた。

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