口腔病学会雑誌
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口外記録法による顎関節顆頭運動の分析
第2報正常および異常顎関節運動について
太田 勝美
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1976 年 43 巻 3 号 p. 293-331

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抄録

下顎頭の動きは下顎の運動中に指を外耳道に挿入するとその軟組織を介して認知できる。著者はこの事象を応用し, 外耳道から下顎頭の前後運動を記録する装置を考案し, これを用いて, 一方では正常な顎運動を行う被験者10名について下顎運動のパターンを, 他方では, 異常な顎運動を行う被験者14名 (顎関節症患者12名, 下顎前突による咀嚼障害患者1名, 右側下顎頭に発生した骨腫による下顎運動障害患者1名) についてその術前, 術後の下顎運動を記録し, 比較した。本研究で用いた記録装置は下顎頭の前後的運動を記録する簡単なものであるが, 次のような種々なる運動が記録されえた。
1.歯牙接触の比較的少ない限界運動と歯牙滑走運動との記録から, もし歯牙滑走路の方向性と純粋な下顎運動路の方向性が一致すれば, より安定した顎運動が合成され, 著しく異なれば, より不安定な顎運動が合成されることがわかった。
2.歯牙滑走路は滑走運動だけに影響するのではなく, 歯牙接触の少ない限界運動も間接的に影響を及ぼしていた。
3.正常者の側方運動時の平衡側の下顎頭外側部の運動はすべて中心咬合位より前方に運動していたが, 作業側の下顎頭外側部では中心咬合位より後方に運動するものが一番多く (65%) 次いで中心咬合位付近で僅かな前後運動をしているもの (20%) と, 中心咬合位より前方に運動するもの (15%) もあった。
4.異常者の中には, 水平要素の大きい前方運動または側方運動時に中心咬合位まで下顎頭がもどらなかった例が (14例中2例) あった。
5.異常者の中には, 側方運動時に作業側と平衡側の両側下顎頭が同時に前後的に同一方向に移動する例があった。
6.異常者のなかには, 側方運動時に正常者では認められない作業側の大きな後方運動と同時に平衡側の小きな前方運動を呈する症例があった。またこれと反対に, 僅かしか運動していない作業側下顎頭と, 前方運動時の下顎頭運動よりもさらに大きな平衡側下顎頭運動を行う症例があった。これらの作業側と平衡側の両方の運動は互いに補い合う代償的な運動であった。
7.これらの異常運動のパターンを分析することによって, その原因または誘因となっていた咬合異常を見つけ出すことができた。
8.術後の予後良好な患者では, その運動パターンが正常者のそれに似てくることが認められた。
9.これらの臨床実験成績から本記録装置は, 顎口腔系機能異常疾患の的確な診断および治療ならびにその予後の判定に十分応用できる。

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