口腔病学会雑誌
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サケ科魚類咽頭の歯の分布について
橋本 巌後藤 仁敏小寺 春人井上 孝二
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1976 年 43 巻 3 号 p. 332-349

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抄録

サケ科魚類の口腔に歯が多数分布していることはよく知られているが, 著者らはニジマスでは咽頭にも咽頭歯と鰓耙骨歯 (鰓弓面の鰓耙にあり, 鰓耙骨に植立する) の2群の歯があることをみて報告してきた。ここでは, このような歯が他のサケ科3属5種 (サケ属ヒメマスとヤマメ, ニジマス属ブラウンマス, イワナ属イワナとカワマス) にも分布しているかどうかを検索した。口腔から消化管起始部まで, X線撮影やalizarin red染色等を行って内腔面を精査し, また光顕組織標本を作製して鏡検した。その結果, 咽頭に上下の咽頭歯群と多数の鰓耙骨歯が認められた。これらの歯は口腔の歯と同様, 円錐形で均質な象牙質からなり, 多生歯性で, ただ微細な鰓耙骨歯だけは歯堤の出現なしに形成されるなど, ニジマスと同様であった。結論として, これらの淡水産マス類では口腔と咽頭に同様の歯が共通してみられ, 分布状態もほとんど同様であるが属により若干差異がみられた。

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