口腔病学会雑誌
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再発性アフタに関する免疫学的研究
―慢性再発性アフタおよびBehcet病における末梢血リンパ球幼若化現象について―
原 利通
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1976 年 43 巻 4 号 p. 394-409

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抄録

再発性アフタ53名, Beh陦et病15名および健康人35名について, 末梢血リンパ球幼若化現象を検討した。非特異的抗原としてPHA, 特異的抗原として口腔粘膜抗原および緑連菌抽出抗原を用いた。測定には幼若化現象により合成されたDNA中への3H thymidineの取り込みを液体シンチレーション・カウンター (liquid scintillation counter) で測定する方法を用いた。得られた結果は以下のようである。
1.PHAに対する反応
自己血漿加リンパ球において, 健康人群の測定平均値は37, 604±14, 462cpmであった。再発性アフタ群およびBeh陦et病群のそれは35, 928±15, 718cpmおよび32, 619±14, 704cpmであり, cpmでは健康人よりやや低い傾向がみられたが, 有意差は認められなかった。またstimulation ratioの平均値 (平均SR) は健康人群84.6±32.4, 再発性アフタ群86.6±36.8, Beh陦et病群87.4±31.6であり, 3群ともほぼ同値を示した。
FCS加リンパ球においてもほぼ同様の傾向であり, 再発性アフタおよびBeh陦et病患者には, PHAで検索される細胞性免疫機能の有意な低下は認められなかった。
2.口腟粘膜抗原に対する反応
自己血漿加リンパ球における平均SRは健康人群1.09±0.52, 再発性アフタ群0.88±0.26, Beh陦et病群1.09±0.44であり, FCS加リンパ球においてもほぼ同値を示した。この結果から, 再発性アフタおよびBeh陦et病患者のリンパ球が口腔粘膜抗原により感作されていることは否定的であると考えられた。
3.緑連菌抽出抗原に対する反応
健康人, 再発性アフタおよびBeh陦et病群の自己血漿加リンパ球におけるStr.salivarius抽出抗原に対する平均SRは, それぞれ2.69±1.64, 1.84±1.27, 1.47±0.73であり, Str.mitisに対する平均SRはそれぞれ2.88±1.85, 1.67±1.23, 1.40±0.56であった。再発性アフタおよびBeh陦et病ではSRが低い傾向がみられ, 健康人との間に統計学的有意差が認められた。しかし両疾患の間には有意差はみられなかった。このことより再発性アフタおよびBeh陦et病患者のリンパ球は緑連菌抽出抗原に対する反応性が有意に低下していると推測された。しかしFCS加リンパ球では, 健康人および再発性アフタとも平均SRが1以下であり, 反応陽性例はほとんど認められなかった。

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