口腔病学会雑誌
Online ISSN : 1884-5185
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曲線適合による歯列弓形状の検討
岩林 幹雄
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1977 年 44 巻 1 号 p. 57-71

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抄録

成人女子正常咬合者31名と, 非抜歯で治療を受けた患者20名の治療前, 終了時および保定終了時の咬合模型を資料として用い, 1) 個々の歯列弓形状にもっとも適合性が良く, かつ表現法が比較的簡単な曲線2) 正常咬合者と矯正患者の治療終了時における歯列弓形状の差異, 3) 矯正患者の歯列弓形状の変化, の3点の検討を目的として本研究を行った。林の方法に準じた計測点を3次元座標入力装置により入力し, これらのデータを懸垂曲線, 楕円, 4次多項式および円錐曲線にあてはめ, 最小2乗法による残差2乗和の値により, 適合性の比較検討を行ったところ, 以下の結果を得た。
1.4種の曲線のなかで, 上下顎ともに4次多項式がもっとも適合性が良く, 次いで円錐曲線楕円の順となり, 懸垂曲線はもっとも適合性が悪かった。上顎は4次多項式, 円錐曲線下顎はそれら2者のほかに楕円で表現される例が加わる。4次多項式と円錐曲線により, 約90%の歯列弓形状を表現できる。
2.正常咬合者と矯正患者の治療終了時との歯列弓形状に, 有意の差が認められた。
3.矯正患者の歯列弓形状の変化の傾向は, 治療前から治療終了時までの間で, 下顎において有意の差が認められた。
4.正常咬合者の歯列弓において, 4次多項式の係数を用いてその形状をみると, 上顎では放物線状の傾向が強く, 下顎では角状の傾向が強かった。

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