口腔病学会雑誌
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モアレトポグラフィー法による正常人顔面の対称性に関する検討
塩入 重彰
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1978 年 45 巻 1 号 p. 147-169

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抄録

顔貌の左右対称性は顔面の変形を生ずる各種疾患の診断における重要な指標であるとともに, 顔面の著しい醜形に対する形成手術あるいはエピテーゼによる再建法の発達に伴い治療学上からも検討が要請されてきている。そこで, 立体形状の記録法としてその有用性が広く認められつつあるモアレトポグラフィー法を応用し, 顔面非対称性の計測を試み, まず健常人の生理的範囲内における顔面非対称性の程度, 加齢・性差などによるその変化を検索し, さらに歯牙欠損の与える影響について検討を加えた。
研究方法としては健常成人100名および歯牙欠損を有するほかは健常な成人20名を対象とし, 実体格子法によるモアレ写真を作製した。ついでモアレ写真上で, 鼻根・鼻尖・鼻下・上唇・下唇・オトガイ最突出各点の計6個の正中計測基準点を設定した後, 各計測基準点を通る水平断面の左右非対称性を加藤の非対称率として表現した。
その結果, 健常人の顔面非対称性ではおおむね非対称率が1桁台であった。非対称率の標準偏差は大きく, 個人差の大きいことをうかがわせた。
加齢に伴う変化は, 20歳代と30歳代以上を比較するとすべての計測基準点に関する平均非対称率が後者において前者より大きく, 加齢による顔面非対称性の増大をうかがわせた。
性差については, 20歳代男女性の比較で有意差を見いだしがたく, 顔面非対称性は男女性間に差異のないことをうかがわせた。
主として上顎前歯・小臼歯部の非対称的歯牙欠損を有する被験者群では, 正常な歯列を有する群より上唇点を通る水平断面の顔面中央部平均非対称率が有意に大であった。

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