口腔病学会雑誌
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歯肉癌由来細胞株 (Ca 9-22) の乳酸脱水素酵素に関する研究
木村 義孝
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1978 年 45 巻 1 号 p. 20-35

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抄録

人の歯肉扁平上皮癌に由来するCa9-22細胞は形態学的特徴が原発癌と酷似していることから, 現在, 癌の免疫学的な研究等に利用されている。しかし今後さらに本細胞が口腔癌の免疫学的研究その他に広く利用されるためには, その細胞生物学的な性質, 特に組織化学的, 生化学的性状をより明確にする必要があるものと思われる。今回, Ca9-22細胞を中心にテトラゾリウム法を用いてLDH, SDH, NADH-DH染色を行い, アゾ色素法によりA1-P染色を行った。さらにKB細胞, HeLaS-3細胞および正常な人の歯肉上皮を対照として, Wr隰blewskiらの方法によりLDH活性を測定し, Dietzらの方法に準じてディスク電気泳動を行いLDHアイソザイムの分離を行った。結果は次のようであった。1) Ca9-22細胞のLDH, NADH-DH反応はKB細胞と同程度で, HeLaS-3細胞よりやや弱かった。2) SDH反応はCa9-22細胞に最も強く認められた。3) Ca9-22細胞のA1-p反応はごく一部の細胞の細胞膜と思われる部分に弱い陽性反応を認めた。4) DNA量あたりのLDH活性は, Ca9-22細胞では2.4±0.6×10-3単位/μ9-DNAで歯肉のそれの1/2であった。5) Ca9-22細胞のLDHアイソザイムパターンはIDH-3にピークを持ち, LDH-3>LDH-2>LDH-4>LDH-1>LDH-5の順であった。6) KB細胞, HeLaS-3細胞および歯肉上皮におけるLDHアイソザイムはM-typeのパターンを示したが, Ca9-22細胞ではH-subunitが55%とH-typeのパターンであった。
以上のような所見が得られたが, これらはCa9-22細胞の生化学的特徴の一端をとらえたにすぎず, 今後さらに癌細胞の膜抗原性の有無等についても研究をすすめるつもりである。

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