口腔病学会雑誌
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ドチザメの歯に関する組織発生学的研究
後藤 仁敏
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1978 年 45 巻 4 号 p. 527-584

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抄録

サメ類の歯の外層は, 間葉性エナメル質といわれるが, その本態については未だ不明な点が多い。著者は, 歯の比較発生学的研究の一環として, 軟骨魚類のドチザメを材料とし, 機能歯の構造, 歯堤と歯胚の位置関係, 歯胚の発育過程, エナメル質の構造と形成, およびエナメル芽細胞の分化過程について, 光学顕微鏡走査ならびに透過電子顕微鏡を用いて観察を行った。
初期歯胚は歯堤の舌側深部端に形成され, 発育に伴って歯堤に結合した状態で唇側浅層に移動し, 順次萌出する。歯の硬組織形成は, エナメル質基質の形成から始まる。エナメル質基質は, 基底膜の歯乳頭側に形成され, 初期にはcollagen線維のみからなり, Korffの線維と連続しているが, やがて微細なtube状構造物が密に出現する。エナメル質の結晶は, 基質を構成するtube状構造物やcollagen線維の配列方向に従って沈着・配列する。結晶の沈着ならびに成長は不揃いに進行するが, 最終的には石垣状に密に配列するようになる。エナメル芽細胞には, 基質形成期にglycogen粒子の集合体が多数出現し, 石灰化期から成熟期にGolgi complexが発達して多数の顆粒状構造物が出現するなど, エナメル質形成に積極的に関与している状態が, 観察される。

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