口腔病学会雑誌
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吸啜舌運動の中枢性リズム発生器の局在
―新生仔ラット摘出脳幹-脊髄標本における解析―
劉 嘉
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1997 年 64 巻 4 号 p. 499-511

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抄録

ラット新生仔in vitro脳幹-脊髄標本を用いて, NMDAの灌流液中への投与によって誘発される舌下神経の吸啜様リズム活動を指標にして, 吸啜運動のリズムを発現させる中枢運動司令の形成に必須のニューロン集団あるいは回路 (中枢性リズム発生器) の局在を検察した。
活動依存性にニューロンに取り込まれる蛍光色素Sulforhodamine101 (S 101) を, NMDA投与によって吸啜様リズム活動が舌下神経に出現中に投与し, これによって標識されるニューロンの局在および数を, NMDAを投与せず自発性のリズミカルな吸気活動だけが出現している標本において標識されるニューロンの局在および数と比較した。どちらの場合にも, 舌下神経核, 顔面神経核, 疑核, 孤束核, 三叉神経脊髄路核, 下オリーブ核, 外側網様核, 巨大細胞網様核, 腹側網様核などに認められた。これらの標識結果を, NMDA投与群と非投与群とで比較すると, 投与群のほうが非投与群より, 標識されたニューロンの数が多く, また蛍光も強かった。これは, 吸啜様リズム活動の出現に一致して活性化されたニューロンの数ならびに活動の増加を反映するものと想定される。これらの核のなかで, 巨大細胞網様核では, NMDA非投与群では標識されたニューロンの認められなかった例が5例中2例認められたのに対して, 投与群では5例全例で標識ニューロンが見いだされ, またその数も非投与群で標識ニューロンが認められた例に比して著しく多かった。この結果は, この核が吸啜運動の中枢性リズム形成で特に重要な役割を果たしていることを示唆している。
NMDA投与による舌下神経の吸啜様リズム活動は, 成熟動物の咀嚼リズム形成に必須の役割を果たす領域の一部を構成する顔面神経核レベルの橋尾側部, 孤束核を含む延髄背側部, 吸啜反射で感覚性入力の伝達に関与する三叉神経脊髄路核を, 脳幹に切断を加えて除去しても残存した。
以上の結果から, 吸啜舌運動の中枢性リズム発生器は, 巨大細胞網様核, 腹側網様核を含む延髄腹内側部に局在すると結論される。

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