交通学研究
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高速鉄道の経済効果:日欧のパネルデータ分析
山口 勝弘
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2017 年 60 巻 p. 95-102

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抄録

わが国と欧州における高速鉄道の経済効果についてパネルデータを用いて分析したところ、いずれにおいても2~3%程度の正の生産力効果が確認され、高速鉄道の整備が生産性の向上に寄与していることが明らかとなった。推定された係数を用いて生産力効果を算定すると、わが国では1964年度~98年度の累計で136兆円、欧州では1981年~2001年の累計で470兆円となる。一人当たりGDPの成長への寄与についてはわが国では正の効果が確認され、推定された係数で高速鉄道の成長誘発効果を算定すると1964年度~98年度の累計で171兆円に達する。一方、欧州においては一人当たりGDPの成長への高速鉄道の寄与については統計的に有意な結果は得られなかった。高速鉄道の整備は、わが国においては成長への寄与が特に大都市圏において顕著であり、その効果が大都市圏から地方に波及する「雁行型成長モデル」を先導していることが示唆されるが、欧州においては、生産性の向上には貢献しているものの経済の成長面にはより複雑な影響を及ぼしているものと考えられる。

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