フォーラム現代社会学
Online ISSN : 2423-9518
Print ISSN : 1347-4057
論文
男性従業員の仕事への不満が離職に及ぼす影響
―不満の解消機会に注目して―
吉岡 洋介
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2016 年 15 巻 p. 32-45

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抄録

近年の労働市場では、不満を理由に勤め先を離れる者が増加しているという。本稿はこの不満離職の増加を、従業員の不満の増加だけでなく、不満でも勤め続ける者の減少として、すなわち不満の解消機会の広がりを意味していると想定する。そのうえで、不満の解消機会は労働市場のいたるところで開かれているのか、それとも労働市場の位置によっては不満でも勤め続ける者が存在するのかを明らかにする。さらに満足でも離職する(せざるをえない)者の存在を明らかにする。

従来のパネルデータを用いた先行研究は、従業員が仕事に満足であれば勤め続けやすく不満であれば離職しやすい傾向を明らかにしてきた。さらに本稿では、仕事不満度と職業変数との交互作用効果の検討により、意識にかかわらず勤め続ける傾向や離職する傾向にある者の職業的特徴を明らかにする。

2007年と2008年に行なわれたパネル調査(JLPS)の2次分析の結果、2007年の男性従業員の仕事不満度は翌年までの離職に確かに影響し、満足であれば勤め続け不満であれば離職する傾向がみられた。しかし交互作用効果を検討したところ、好条件の転職機会にめぐまれにくいブルーカラーは不満でも勤め続けやすく、非自発的離職を強いられやすい非正規雇用は意識にかかわらず離職しやすいことがわかった。不満離職が増加したとはいえ、意識と離職の関連の仕方は一様ではなく、労働市場の位置によって条件づけられていることが明らかになった。

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© 2016 関西社会学会
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