フォーラム現代社会学
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特集I 歴史経験の語られ方、記憶のされ方
済州4・3を語る、済州4・3から語る
伊地知 紀子
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2018 年 17 巻 p. 127-136

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抄録

本シンポジウムのテーマである「歴史経験の語られ方、記憶のされ方」について、済州4・3を事例として報告した。済州4・3をめぐる語りは、語り手である個人、その家族あるいは親戚姻戚が何をしていたのか、どこにいたのか、どのように犠牲となったかといった事件当時だけではなく、事件後にこれらの人びとがどこでどのように暮らしたのかによっても規定される。他二本の報告は、東北大震災(金菱報告)と三池炭鉱報告(松浦報告)であった。各報告と合わせて議論することにより、歴史経験の語られ方、記憶のされ方についての論点として気づいたことがある。それは、歴史経験や記憶を開いていく場をどのように設定するのか、別の表現をとるとすればpublic memoryの時間軸をどう設定するのか、空間をどこまで広げるのか、つまりpublicと形容する時どのような枠組みを前提として論ずるのかということだ。この問いは、ある地域のある時期における歴史経験が、後の生活にいかなる影響を及ぼすのかという視点を複眼的に置くことなくしては深めることが困難なものである。この気づきを踏まえて、済州4・3とはいかなる歴史経験であり、体験者や遺族などがどのように語り、さらに済州4・3から何を語りうるのか、本稿は在日済州島出身者の生活史調査からの試論である。

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