フォーラム現代社会学
Online ISSN : 2423-9518
Print ISSN : 1347-4057
特集 アートと社会/地域の現在―瀬戸内から考える
地域とアートの“幸福な関係”はいかにして可能か?
―G・ジンメルのアイデアを参考に―
徳田 剛
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 18 巻 p. 138-148

詳細
抄録

本稿では、アートプロジェクトにおける地域とアートの“幸福な関係”がいかにして可能かについて、ドイツの社会学者ゲオルク・ジンメルのアイデアを参照しつつ検討する。アクターとしての地域とアートは、持続可能性の観点からも「外部者との連携・協働」を必要とするが、その一方で自らの営みにとってどのような意義(手段的価値)を持つかで相手方を評価しがちである。そのために両者の連携・協働には、「地域がアートを/アートが地域を利用する」関係に陥るような原理的な危険性を内包している。

そこで、地域とアートの関係において相手を手段的に位置付ける発想を軽減する関係原理として、ジンメルの以下の3つのアイデアを参照する。1)地域でのアート活動が双方にとって「目的であり同時に手段であるような」性質を帯びたものにする工夫(「とって」論)、2)地域でのアート制作等の現場を、「目的-手段系列」を無効化するような「社交空間化」としてデザインする工夫(「社交」論)、3)地域とアートの両者の気質や活動原理を把握し関係調整を行うキュレーターの役割遂行(「よそ者論」)の3点を、アートプロジェクトが円滑に進行するうえでの3条件として提示する。

著者関連情報
© 2019 関西社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top