人口が減少し続け、経済規模も停滞する現代日本社会は、社会が拡大ではなく、収縮しているという意味で、高度収縮社会と捉えることができる。そのなかでも、戦前は「東洋のマンチェスター」と呼ばれた大阪を中心とする関西は、日本の他地域に比べても経済が停滞している収縮社会の典型である。そこで、本論では、まず、その特徴を経済規模、人口移動などの点から明らかにし、関西が失ったのは、戦前に生み出されつつあった文化的知であることを示す。次に、この失われた文化的知とは何かについて、文化的知を生む基盤としての自律的な社会の誕生と、それに関する知としての社会学の導入を中心に見ていく。そして、収縮社会である関西において、新たに文化的知を生む条件とは何かについて明らかにしていく。この条件とは、関西の外部に新たな知を求めていた遠心力が働く拡大社会とは異なり、すでに蓄積された知と事物に基づき、新たな文化的知を生み出す場が潜在的に存在しているので、そこがどこまで求心力を持つかが重要であるという点を最後に示す。