関東東山病害虫研究会報
Online ISSN : 1884-2879
Print ISSN : 1347-1899
ISSN-L : 1347-1899
虫害の部
小笠原諸島父島におけるアメリカシロヒトリの発生消長
近藤 健大林 隆司小野 剛竹内 浩二井川 茂小谷野 伸二
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 2009 巻 56 号 p. 103-106

詳細
抄録

1994年,小笠原諸島父島にアメリカシロヒトリの侵入が確認されたため,その後,1997年から約10年間にわたって性フェロモントラップによる雄成虫の発生消長調査を行った。小笠原では本種の誘殺数が多くなる時期が3回あり,4月下旬,6月下旬,7月下旬に誘殺ピークがみられた。一方,東京都立川市での発生時期は5月中旬,7月下旬,8月下旬であり,小笠原の発生時期と異なっていた。これは,小笠原では東京に比べて冬期の気温が高いこと,秋期の日長が短いことなどの自然条件の違いが影響していると推察された。小笠原において秋期から冬期にかけて不規則な誘殺ピークがみられたが,雄成虫の前翅の黒色斑紋発現率を比較したところ,本来翌春に羽化すべき個体の一部が休眠覚醒して羽化したものと考えられた。また,小笠原の誘殺ピークについて有効積算温量との関係を試算すると,越冬世代の50%誘殺点から第1世代の50%誘殺点までの有効積算温量は840日度,第1世代から第2世代までは580日度であった。これは日本本土で報告された数値よりもやや少ない傾向にあったが,小笠原においても有効積算温量によって発生時期を説明することが可能であった。

著者関連情報
© 2009 関東東山病害虫研究会
前の記事 次の記事
feedback
Top