褐変は病原菌の侵害に対する寄主細胞, 組織の抵抗の表現として十分役立つものであるが, それが抵抗に関係をもつためには, 褐変が速かに起り, それが狭い範囲に限られ, その周囲の細胞は生活を続け, しかも異常な代謝と消耗を行い, 時に細胞の増殖さえ行うということが条件となる。そして褐変途上の細胞または褐変部周辺の細胞では褐変の原因となるポリフェノールが増しているにもかかわらず褐変を抑えるような仕組みが出来ていなくてはならない。それでもなお褐変が進むとき, 単にポリフェノールの酸化だけでなく, これに附ずいして寄主細胞側にいろいろな現象が起り, 糖の消耗, アミノ酸の脱アミノ, 有機酸の生成と消費, テルペンの生成, 正常な酸素伝達の変調, 細胞内容の顆粒化といつたことが起つてくるのである。その何れが抵抗の原因として最も重要であるかは別の機会にのべることとする。