天敵昆虫の利用は, 最近の環境保全型農業の指向にともなって注目されるようになった。永続的利用は, 利用場面は限られるものの, チュウゴクオナガコバチによるクリタマバチの防除のように, 成功すれば高い経済的効果が得られる。しかし一方で土着昆虫への影響が懸念される。オンシツツヤコバチやチリカブリダニの農薬登録とともに, 急速に研究が活発化した温室害虫の生物的防除に利用できる天敵としては, これら2種以外では, アザミウマ類に対する土着ヒメハナカメムシの利用が有望である。天敵利用を推進するためには, 作物別に防除技術の体系化が必要であり, 体系化の容易さからトマトにおける天敵利用が最も実用化に近いと考えられる。