関東東山病害虫研究会報
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冠水被害を受けたリンゴ果実に発生した疫病
近藤 賢一岩波 靖彦前島 勤飯島 章彦
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2008 年 2008 巻 55 号 p. 67-74

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抄録

2004年10月に襲来した台風23号および2006年7月の豪雨により, 県北部の千曲川河川敷内の樹園地では河川の氾濫による冠水被害を被った。冠水したリンゴ果実では疫病が発生し, 2004年には冠水13日後, 2006年には冠水5日後に初発し, 冠水から発病までの期間は両年で大きく異なった。樹上での発病推移をみると, 両年ともに初発直後に多く, 以降, 新たな発病は次第に減少したが収穫期まで長期間にわたり続いた。冠水後から収穫期までに樹上で発生した最終的な発病果率は両年ともに概ね2~3割程度であった。さらに, 収穫果では貯蔵中にも発病が確認された。発病に関与した疫病菌は3種認められ, 2004年は Phytophthora syringae, 2006年はP. cambivora およびP. cactorum が主体で, 発生年により優占種は異なった。2004年には発病抑制効果をねらって, 冠水4日後にクレソキシムメチル水和剤, キャプタン水和剤を散布したが, 疫病の発生を低減させる効果は認められなかった。一方, 疫病による果実腐敗とは別に果心部付近の果肉が褐変, 腐敗する障害が発生したが, 特定の病原菌は分離されず, 水没処理試験の結果から, 本障害はリンゴ果実が一定時間水没することによって発生する生理的障害であると考えられた。

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