2006 年 73 巻 4 号 p. 376-390
チャータースクールは、貧困や階層の再生産に歯止めをかけるアファーマティブ・アクションの実験学校になりうる。この新しいタイプの公立学校は、教育の市場化や保守主義的な身内優先主義(tribalism)を実現する学校であると批判される。しかし、個人商店型に分類されるチャータースクールのなかには、学業達成の向上をはかり、社会正義の担い手を育ててきた「効果のある学校」も実在する。そこでは学校設置権や事実上のアカウンタビリティー定義権という新しい権利を胚胎させている。これは構築主義的な新たなアファーマティブ・アクションの実践に他ならない。本稿は、こうした実践の分析ツールを彫琢するために、新旧アファーマティブ・アクション規範論の再構成を試みている。ナンシー・フレイザーの正義論やサミュエル・ボールズとハーバート・ギンタスの平等論が、再分配と承認を接合させる構築主義的規範理論の源泉となることを見出すことになった。