1986 年 17 巻 4 号 p. 539-545
症例は23歳の双生児で, 双方とも右乳房に3つずつ腫瘤を触知した。乳房X線撮影および超音波検査にて線維腺腫が疑われ, 腫瘤が摘出された。病理組織学的診断では, 妹は線維腺腫のみであったが, 姉には線維腺腫および管状腺腫があった。この姉妹については, HLA, 血液型, 血清型, 赤血球酵素型の検索結果から一卵性であると証明された。一般に線維腺腫が遺伝による疾患であるとはいわれていないが, 本症例は一卵性双生児であり, ほぼ同時期に同側に乳腺線維腺腫が発生したことにより, 何らかの遺伝的素因があったのではないかと考えられる。