杏林医学会雑誌
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ヒトの後脛骨筋の動脈分布について
神林 隆幸横山 寿光守屋 厚斎藤 嘉代五十嵐 純高藤 豊治佐藤 泰司
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1991 年 22 巻 1 号 p. 13-26

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抄録

当教室の研究の一環として,ヒトの骨格筋内の栄養動脈の分布に関する研究を進めている。本論文では日本人成人10体・20体側の後脛骨筋の動脈中にアクリル系色素を注入し,筋中の栄養動脈の分布等について検索した所見を報告する。1.本筋は主に腓骨動脈(Pe)が栄養し,さらに固有後経骨動脈(Tpp,佐藤'84),総後脛骨動脈(Tpc,佐藤'84),前脛骨動脈(Ta)および膝窩動脈(Po)も分布する。また,これらの分枝には,膝窩筋,ヒラメ筋,長指屈筋,長母指屈筋等との共通枝(om)および本筋のみの栄養枝である後脛骨筋枝(Rmtp)が認められる。2.栄養動脈の分布状態による分類および頻度I型:上端起始縁付近の筋束をPo,上部上半をTaとTpc,上部下半・中部・下部をPeとTppが分布(5%)。II型:I型からPoが欠如(55%)。III型:I型からPoとTpcが欠如(35%)。IV型:I型からPoとTaが欠如(5%)。尚,PeからはRmtpが,Tppからはomが主に分布していた。3.栄養動脈の分布領域は,I型:Po 2.5%, Tpc 11.4%, Tpp 13.3%およびPe 70.6%, II型:Ta 15.0%, Tpc 11.5%, Tpp 17.3%およびPe 56.1%, III型:Ta 20.4%, Tpp 18.1%およびPe 61.5%, IV型:Tpc 20.1%, Tpp 25.9%およびPe 53.9%であった。全例の平均ではPeが筋全体の58.6%を栄養するが,そのうちPe (Rmtp)が45.8%を占めていた。4.全例に本筋への怪骨栄養動脈(Nt)の栄養枝(分布面積比は平均14.1%)が認められたが,起始がTaから分岐するもの55%,Tpcから分岐するもの35%,Tppから分岐するもの10%であった。5.栄養動脈の総数は14本から23本までで,出現頻度の最も多い本数は17本(20%)であった。

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© 1991 杏林医学会
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