杏林医学会雑誌
Online ISSN : 1349-886X
Print ISSN : 0368-5829
ISSN-L : 0368-5829
下壁心筋梗塞におけるV_5V_6陰性T波の意義 : 心筋梗塞部位,冠動脈所見の推察
堀江 博夫
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 23 巻 1 号 p. 13-23

詳細
抄録

初回下壁梗塞81例を対象として,発症約1ヵ月後の12誘導心電図で,V_5V_6に陰性T波を伴う群(A群47例)と伴わない例(B群34例)に分け,それぞれの群の冠動脈造影所見,左室造影上の壁運動異常部位,および左室駆出率を比較し,下壁梗塞症例における V_5V_6の陰性T波の意味を検討した。A群では,責任動脈は47例中42例が右冠動脈で,このうち41例では右冠動脈から出る後側壁枝の本数が全体の後側壁枝数の1/2を越えていた。B群では,責任動脈は34例中33例が右冠動脈で,このうち22例では右冠動脈から出る後側壁枝の本数が全体の後側壁枝数の1/2以下であった。また,壁運動異常については,A群では,B群と比較して有意に壁運動異常が後側壁方向へ伸展していた。下壁梗塞でのV_5V_6陰性T波は,後側壁枝の灌流領域の梗塞と深い関係が有ることが示唆され,V_5V_6陰性T波の有無により後側壁方向への梗塞の伸展度を推定することが可能と思われた。

著者関連情報
© 1992 杏林医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top