1997 年 28 巻 4 号 p. 543-548
症例は72歳,女性。5年程前より高血圧にて内服中であった。突然の胸痛と意識障害を認め緊急入院した。入院時JCSの20〜30の意識障害および左不全片麻痺を認め,頭部CTを施行したが明らかな病変を認めなかった。心電図では急性下塗心筋梗塞を疑わせる所見を,胸部レントゲン写真では縦隔の拡大所見を認め,大動脈解離を疑い,引き続いて胸腹部CT検査,経動脈的DSAを行なった。DeBakey分類I型大動脈解離と診断が確定し,その解離腔による右冠動脈と腕頭動脈の血流障害の所見を認めた。急性下塗心筋虚血と意識障害の同時に発症しうる病態が理解され,bentall手術を施行し救命し得た一例を経験した。