杏林医学会雑誌
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右心房内腫瘤及び完全房室ブロックを合併した悪性リンパ腫の1例
大口 真寿甫守 正史蓮村 友樹久新井 知子日置 佳子青木 伸夫川野 晃一青木 功肥後 理石川 恭三
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1997 年 28 巻 4 号 p. 549-553

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抄録

66歳女性。発熱と全身のリンパ節腫脹の精査加療のため当科に入院した。入院後のリンパ節生検の結果,非ホジキンリンパ腫(B cell, diffuse, large cell type)と診断された。しかしステージング中に心電図上完全房室ブロックが出現し心臓超音波検査を施行したところ右心房内に1.5×1.4cmの腫瘤を認め,悪性リンパ腫の心臓浸潤に伴う房室ブロックと考えられた。不整脈による心不全症状が増悪したため直ちに化学療法(CHOP療法)を開始した。その後腫大した全身リンパ節の縮小とともに完全房室ブロックの改善(III度→I度)腫瘤の完全消失が認められた。組織学的診断は確定されなかったが,以上の経過から右心房内腫瘤は悪性リンパ腫の心臓浸潤と考えられ,ステージングと診断された。悪性リンパ腫の症例のうち心臓浸潤が生前に診断される頻度は約1%程度であるが,その心病変が致命的不整脈を惹起する可能性がある。従って悪性リンパ腫のステージングにおいては心症状が明かでなくとも心電図,胸部レントゲン写真に加え診断的価値の高い心臓超音波検査を早期に積極的に行なうべきであると考えられた。

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© 1997 杏林医学会
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