1972 年 3 巻 1 号 p. 13-20
稀な疾患である特発性副甲腺機能低下症における脳波変化を血清Caとの関連において経時的に検討した。特に前頭頭頂部における高振幅徐波の持続的律動的出現と散発性棘波が主要異常所見であったが, 治療開始後なおも血清Caが低値にある時期に脳波には著明な改善が認められ, 細胞外液中のCaの充足が血清Caの上昇に先立つことが推定された。血清Caが正常化しても初期の中は過呼吸により顕著な徐波化が認められたが, 約2カ月後にはこの現象は見られなくなり, 低電位速波を基礎律動とし低電位徐波を時に混じ, α波も僅かながら見られる一応安定した脳波所見を得た。往々癲癇と診断されるほどの本症における異常脳波は疾患の長期持続による不可逆的変化の存在は否定できないが, 大部分は他の多彩な諸症状徴候と共に低Ca血症の一表現であり, Ca代謝の異常による神経細胞の機能障害によるものと判断される。